日本皮膚科学会認定皮膚科専門医研修目標および研修内容

平成15 年度改正
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医研修目標および研修内容
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医研修目標および研修内容』を改訂いたしました.以下にお知らせいたします.「日本皮膚科学会認定皮膚科専門医規則および同規則施行細則ならびに手引き」と併せてご参照ください.
平成16 年3 月
(社)日本皮膚科学会専門医制度委員会
昭和62 年4 月施行
(平成2 年3 月改訂)
(平成7 年7 月改訂)
(平成15 年12 月改訂)
研修の目標
医師としての全般的基本能力の修練を基盤に,皮膚疾患の高度な専門的知識・診断・治療技術を修得し,関連領域に関する広い視野をもって診療内容を高める.皮膚科の進歩に積極的に携わり,患者と医師との共同作業としての医療の推進に努める.また医師としてまた皮膚科専門医として,医の倫理の確立に努め,医療情報の開示など社会的要望に応える.
研修内容の解説
皮膚科専門医の研修内容を,I.医学一般,II.皮膚科学総論, III. 皮膚科学各論の3つのコースに分け,それぞれについてユニットで項目分けを行った.
研修内容の構成:一般目標は学習者が学び,行うべき内容を,大きく把握して示してある.
行動目標は,以下の三領域に分けられる.知識を活用する領域では,第1 レベル:知る,理解する,第2レベル:説明する,第3 レベル:適用する,熟知するで,示している.
専門医としての技能・実技の習得領域では,その到達度を第1 レベル:指導医の指導のもとに実施する,第2 レベル:実施する,および第3 レベル:熟練する,で示す.
診療に際しての患者をはじめ,同僚・看護師・その他の関係者に接する態度,さらに,家庭や社会に対する配慮など,倫理的な面を含めた態度の領域では,次のような言葉で示される.尋ねる・協調する・参加する・助ける・応える・寄与する・行う・始める・コミュニケートするなど.各項目の行動目標には,この3 領域が過不足なく入っていることを理想とする.今回の研修内容では,各項目について行動目標を列挙してある.
学習方略
学習者が行動目標で示された目標を実現するための必要な学習の方法である.具体的には,教本,専門誌の該当事項を読み指導医や同僚とクリニカルカンファランスを開くなどして討論する,日本皮膚科学会のホームページを参考にし,またインターネットなどのメディアを活用して最新の情報を得る,治療経過をミニレポートにまとめる,講習会に出席してその要点をレポートにまとめて提出する,生検を行い,病理所見を細かく自分で観察した上で病理診断をくだす,免疫組織的手技を活用して診断や病勢判定を行う,基本的な皮膚外科の手技を習得する,などである.
研修内容のチェック
最後に学習者が研修内容をどのように修得したかをチェックする評価を行う.評価のうち,ある項目を学習したときに,その都度行う基本的評価は,主として指導医によるテストやチェックリスト,レポート提出等により行う.最終評価は,専門医認定試験を含めて専門医委員会が行うことになる.
コースI 医学一般
2 年間の初期研修を経て,医学一般の基本的知識を有することを前提として記述してある.
ユニット1.健康管理,予防医学
一般目標:皮膚科の専門医として必要な遺伝学,精神衛生,公衆衛生,防疫などについて理解し,実施できることを目標にする.
(a)家庭・職場における健康管理
行動目標:以下,1)〜8)を理解する.
1)家庭・職場・学校などの日常生活における健康管理に関する必要事項
2)日常生活におけるスキンケアの重要性と化粧・化粧品に関する問題
3)日常生活における食品・嗜好物と疾病との相関(例えば,食事と痛風・糖尿病,飲酒と肝障害,喫煙と肺癌・内臓癌・心疾患,食塩過剰と高血圧,環境発癌物質など)
4)一般家庭薬(内服・外用),民間薬,いわゆる健康食品,あるいは,いわゆる民間療法などについて有害となりうる側面や副作用
5)環境因子と疾病,例えば,ハウスダスト気管支喘息,花粉症,洗剤と主婦湿疹といわゆるシックハウス症候群
6)職場環境による疾患
7)集団検診,癌検診,人間ドックなどの実情と,皮膚科としての必要性
8)学校,保育園,職場,療養施設などにおける感染症の扱いとまん延防止の対策
(b)精神衛生
行動目標
1)精神状態と皮膚疾患との相関,とくに精神的因子が発病・悪化と関係している皮膚疾患について説明する.また,これに関連して心身医学的検査法について理解する.
2)職場・学校・家庭における精神身体医学の重要性,およびストレスコントロールやストレス解消などの方策について理解する.
(c)防疫
行動目標:以下,1)〜4)について熟知する.
1)医師として必要な公衆衛生・防疫とワクチンの意義
2)感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律
3)皮膚科領域における伝染性疾患の感染防止の方策
4)急性伝染性発疹症としての麻疹,風疹,溶連菌感染(猩紅熱など),泉熱,伝染性紅斑,突発性発疹,伝染性単核症など
(d)遺伝カウンセリング
行動目標:以下,1)〜8)を理解し,あるいは説明する.
1)クライアントの種々の相談事項の内容,遺伝相談の進め方の要点
2)発端患者とコンサルタントとの関係が明示された家系図からの遺伝的危険率の推定
3)常染色体性優性遺伝疾患,常染色体性劣性遺伝疾患,伴性劣性遺伝疾患における遺伝形式,遺伝的危険率の実際,代表的皮膚疾患
4)遺伝学上の浸透度,表型模写,突然変異の意義
5)遺伝的危険率の評価と,挙子可否の判断
6)遺伝性皮膚疾患について遺伝相談上必要な情報,生前診断法
7)クライアントの意志決定に対する援助
8)多因子遺伝疾患における経験的危険率
ユニット2.医療に関する法律,医療問題
全般についての知識
一般目標:皮膚科専門医としてのみならず,臨床医として法律的に適正・健全な医療を行うため,また,医療事故防止および医療事故対策を適正・円滑に行うために遵守すべき必要法規ならびに日本皮膚科学会に関する規約を知悉する.
行動目標:以下,1)〜7)を理解する.
1)医療法,同施行令および同施行規則
2)医師法,同施行令および同施行規則
3)医療事故に関する判例
4)性病予防法,結核予防法および麻薬取締法
5)皮膚科関連の特定疾患(いわゆる難病)の医療費補助システムの知識と患者自身の認定手続きのサポート
6)副作用救済機構の適応を受けられる条件についての知識
7)日本皮膚科学会定款,同施行細則,日本皮膚科学会支部規則および日本皮膚科学会認定皮膚科専門医研修目標および研修内容
ユニット3.健康保険制度と保険診療についての知識
一般目標:我が国の健康保険制度の現状を理解し,保険診療についての正しい知識を得て,実施できることを目標とする.
(a)日本における健康保険制度
一般目標:健康保険診療を行うことは,その関連法規(社会保険法,船員保険法,保険医療担当規則など)に基づく法律行為であることを知らねばならない.既存の法律内容に基づく医療内容と,日進月歩とも言われる現代医学との間には矛盾があることは事実である.これに対し,厚生労働省ならびに各都道府県は特定医療費制度や高度先進医療をもうけたり,法規の細部項目について疑義解釈し,その準用によって現実的運用を試みている.国民皆保険の現状から,新しい診断・検査・治療などに関する知見は健康保険診療に採用されるように積極的に努力すべきである.
(b)老人医療制度
一般目標:現在における社会的背景を含めた老人医療の問題点を認識し,老人における皮膚科的疾患についての実践医療を習得する.
行動目標
1)老人医療および介護保険に関する知識を習得し,適切に介護申請書を作成することができる.
2)老人特有の皮膚疾患において,充分な知識を得て,実際の治療をおこなう.
3)居宅における介護者に,褥瘡を含めた皮膚科処置の方法を適切に指導できる.
4)患者の社会的背景を考慮にいれた治療方法を選択することができる.
(c)皮膚科領域における高額な治療に関する薬価,治療費用などについての知識
ユニット4.Evidence-based Medicine(EBM)と治療ガイドライン
一般目標:EBM の考え方,臨床医学予防医学での活用について正しい知識を得る.また,EBM から導かれた治療ガイドラインの作成法について知る.
行動目標:以下,1)〜3)を理解する.
1)EBM 提唱の背景とその現代的意義
2)EBM に基づいた治療方策の立て方
3)治療ガイドラインの成立過程と治療への応用法
ユニット5.Quality of Life(QOL
一般目標:QOL の意味するものとEBM に基づいた疾患別QOL 評価の意義について正しい知識を得る.
行動目標:以下,1)〜3)を理解する.
1)QOL 評価法についてのガイドライン
2)具体的な皮膚疾患に関連したQOL 評価法
3)皮疹重症度評価とQOL 評価とによる総合的な疾患重症度評価法
ユニット6.インフォームド・コンセントとカルテ開示,セカンドオピニオン
一般目標:インフォームド・コンセント,カルテ開示およびセカンドオピニオンの意義を医師の立場からだけではなく,患者の立場からも理解する.
行動目標
1)インフォームド・コンセントの実際について,指導医のもとに実践する.
2)医療上あるべきカルテ記載の仕方を学び,カルテ開示の意義を理解する.
3)セカンドオピニオンを求められたときの適切な対応を学ぶ.
コースII 皮膚科学総論
一般目標:皮膚の正常構造,機能および病態生理の知識に基づき,皮膚疾患の診断上必要な一般的診断法および検査法を修得し,さらに,全身および局所療法の一般的原則および適応を実施できることを目標とする.
ユニット1.構造と機能
一般目標:皮膚(および粘膜)の構造を分子(遺伝子)・細胞・組織・肉眼の各レベルにて機能と関連させて理解するとともに,部位による形態の差異(例:皮膚紋理,角層,附属器,皮下脂肪の量など),および加齢(成長と老化)や環境(例:紫外線暴露など)による変化を理解して,人体最外表器官としての重要性を認識する.
(a)表皮
行動目標
1)基底細胞層から角層までの構築を光顕と電顕レベルで説明する.また体表の部位による差異を主に光顕レベルで説明する.
2)角化に伴う角化細胞(ケラチノサイト)の細胞および細胞間接合の構築変化を,分子レベルにおけるケラチンの合成過程とともに理解し,角化の生理的機能を説明する.
3)角層の保水能,経皮吸収の側面,そして感染防御機能の側面から,皮膚のバリアーとしての機能を理解する.
4)Langerhans 細胞の分布,形態,機能を免疫学的役割と関連させて理解する.
5)真皮・表皮境界部の微細構造と成分を理解することにより,同部の臨床的意義を説明する.
(b)メラニンメラノサイト
行動目標:以下,1)〜2)を説明する.
1)メラノサイト(色素産生細胞)の由来,体表における分布,構造
2)分子レベルにおけるメラニンの生合成および調節機構,角化細胞への受渡し,角化細胞内での崩壊過程,メラニンの生理的機能
3)メラニンメラノサイトの証明法について光顕的,電顕的所見や特異的染色法,特異的酵素反応を熟知し,実施する.
(c)真皮・皮下組織
行動目標
1)真皮(乳頭層,網状層)の構築および部位による差異を,機能と関連させて主に光顕レベルで説明する.
2)血管系・リンパ系・神経系の分布と構築,とりわけ特別な血管や動静脈吻合,特別な知覚神経終末の構造と機能を理解する.
3)膠原線維・弾性線維の構築と機能,細胞外基質の成分・量・局在を機能とともに理解する.成長と老化に伴う変化についても理解する.
4)線維芽細胞,組織球,マクロファージ,肥満細胞などの結合組織定住細胞の形態と機能を理解する.
5)皮下脂肪層の構築,脂肪細胞の形態と機能,部位による違いを理解する.
(d)附属器
行動目標:以下,1)〜3)を説明する.
1)アポクリン汗腺エクリン汗腺の分布と構造,神経支配,分泌機構,生理学的および免疫学的機能
2)毛包脂腺系の体表部位における差異,個々の構造,毛周期,成長・老化に伴う変化
3)爪の構造および機能
(e)粘膜
行動目標
1)粘膜の構造を表皮と対比しながら説明する.
2)粘膜の生化学・免疫学的機能を理解する.
(f)年齢による皮膚機能の違い
行動目標
1)新生児,幼少児,老人の皮膚の生理機能について,健常成人のそれとの違いを理解し,機能変調に伴う病的な変化に対応できる.
2)妊娠に伴う皮膚機能の変化を熟知し,適切に対応できる.
ユニット2.病態生理
一般目標:細胞生物学・分子生物学・生理学・生化学・免疫アレルギー学などの基礎知識の上に立って,皮膚科医にとって重要な皮膚の病態生理を認識する.また,放射線生物学,光線生物学,微生物学,遺伝学などの進歩を皮膚科学に充分に反映させる.
(a)皮膚病態の細胞生物学・分子生物学
行動目標
1)皮膚の病態を細胞生物学の視点から動的に把握し,サイトカイン,ケモカインや成長因子のネットワークについて理解する.
2)分子生物学的に解明された炎症や腫瘍のメカニズムについて理解する.
3)皮膚の生理や生化学的異常に基づく病態について理解する.
(b)皮膚免疫アレルギー学
行動目標
1)免疫アレルギーの基礎知識,特にアレルギーの反応型,自己免疫,移植免疫,腫瘍免疫について理解する.
2)免疫アレルギーが病態に深く関わる皮膚疾患,例えば膠原病,自己免疫水疱症,薬疹,GVHD などについて充分な知識を修得する.
3)重要な免疫系skin immune system としての皮膚について理解を深める.
(c)放射線生物学・光線生物学
行動目標
1)放射線および紫外線の皮膚に対する生物学的作用について,生理的作用と病理的作用を区別して理解する.
2)光アレルギー,光免疫,光老化,光発癌などの分子生物学的および細胞生物学的機序について充分な知識を修得する.
3)レーザーの原理と治療への応用について理解する.
(d)微生物学
行動目標
1)皮膚感染症(細菌,ウイルス,真菌など)や寄生虫症,動物性皮膚疾患についての一般的事項を理解する.
2)感染アレルギー,ウイルス発癌など微生物と皮膚病態との接点について理解を深める.
3)皮膚感染症の公衆衛生学的側面について充分な知識を修得する.
ユニット3.診断・検査
一般目標:皮膚疾患の診断を正確に行うために発疹学を修得し,一般的および皮膚科的検査法を理解し,さらに皮膚病理組織学の基本的事項を修得する.
(a)診断学
行動目標
1)問診法の手順と採取すべき情報を熟知する.
2)現症を記載する基本的手順を説明し,実施する.
3)採取した主訴,現病歴,既往歴,家族歴,その他の必要事項について明確かつ要を得た記載を実施する.
4)全身性疾患,内臓疾患における皮膚病変の意義を熟知する.
(b)瘙痒
行動目標
1)瘙痒のメカニズムを述べる.
2)瘙痒を生じる疾患について熟知する.
3)瘙痒の評価法とその対処法を熟知する.
4)瘙痒を訴えるときの問診・検査・診断・治療を説明し実施する.
(c)発疹学
行動目標
1)皮疹および粘膜疹,原発疹および続発疹について,記載皮膚科学上必要な用語を熟知する.
2)個疹の特徴を正確に記載する.
3)発疹の分布,配列など,全体像について特徴を把握し,記載することに熟練する.
4)特定の発疹型の対応する主な疾患を列挙し,その病理組織像を説明する.
(d)皮膚病理組織学
行動目標:以下,1)〜4 を説明する.
1)皮膚病理組織学の必要性とその限界
2)病理診断上,通常行われる染色法とその意義
3)組織化学,免疫組織化学,各種電顕法の意義と方法
4)皮膚病理組織学で使われる用語と代表的疾患についての病理組織像
(e)皮膚科検査法
行動目標
1)検査法の全般的事項と適応を説明する.
2)理学的検査法:皮膚描記法(Darier 徴候を含む),硝子圧診,知覚検査法,ダーモスコピー,超音波検査などの検査法を熟知して実施する.
3)Nikolsky 現象,Auspitz 現象を理解し,診断手段として実施する.
4)生理機能検査法:皮膚温の測定,肢端脈波,皮膚血流量測定,サーモグラフ,毛細管顕微鏡検査,発汗テスト,皮脂分析,経皮吸収,毛髪検査,角質水分量測定などの意義を理解し,必要に応じて実施する.
5)アレルギー検査法:皮内テスト,プリックテスト, 貼布試験などのin vivo テスト, RAST 法,DLST 法などのin vitro テストの意味と実施方法,判定などについて説明し,実施する.
6)免疫検査法:リンパ球サブセット同定,HLA タイピング,リンパ球幼弱化試験,サイトカインやケモカイン測定などの意義を理解する.
7)光線検査:MED,MPD,作用波長の測定,光貼布試験,光内服試験などの意味と,実施方法,判定などについて説明し,実施する.
8)皮膚生検:適応・部位・方法・禁忌について列挙して説明し,実施する.
9)皮膚科における一般細菌・抗酸菌・真菌の培養方法,同定法,染色法を理解し,実施する.
10)診断的皮内テスト:スポロトリキン反応,ツベルクリン反応などの意味を理解し,実施する.
11)ウイルス検査法:細胞診,Tzanck テストなどのウイルス性巨細胞の検出法,ウイルスの分離同定法,血清診断法について理解し,疾患の診断における意義を熟知する.
12)梅毒検査法を理解し,診断上の意義を熟知する.
13)分子生物学的検査法:免疫ブロット法,PCR,サザンブロット法などについて理解し,疾患との関連性などについて説明する.
14)臨床写真の意義を理解し,円滑に適切な臨床写真を撮影できるように操作を熟練する.
ユニット4.治療
一般目標:皮膚疾患に対する適切な治療法の基本的事項を説明し,主要な治療法を実施する.
(a)治療ガイドライン
行動目標
さまざまな皮膚疾患についてガイドライン日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎やケミカルピーリングガイドラインなど)が出ており,これを熟知するとともに,実際の治療に役立てる.
(b)全身療法
行動目標
1)全身療法を必要とする皮膚疾患について,治療法の原則を説明する.
2)抗生物質・抗菌物質の種類と抗菌スペクトル,および感受性テストに基づいた投与法・副作用について説明する.
以下,3)〜8)について適応,使用法あるいは実施法,作用と副作用,禁忌などを熟知して実施する.
3)副腎皮質ステロイド
4)抗ウイルス剤
5)抗真菌薬
6)抗腫瘍薬・免疫抑制薬・免疫賦活薬
7)抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬,消炎鎮痛薬
8)その他の全身療法:金製剤,レチノイド,DDS,血漿交換法,プラスマフェレーシス
(c)外用療法
行動目標
1)皮膚外用剤の基剤および配合剤の種類を列挙し,効果,副作用について説明する.
2)皮膚外用療法を実施するに当たって必要な皮膚清浄法(消毒・入浴・石鹸など)とその意義について説明する.
3)外用剤の使用法(単純塗布・重層法・貼付法・ODT など)に応じた適応とおこりうる副作用を列挙して説明し,実施する.
4)副腎ステロイド外用剤の種類と使い分けの基本事項,副作用とその防止法について熟知する.
5)サンスクリーンの効果をあらわすSPFPA の意義を理解し,適応と使用法を説明する.
以下,6)〜11)について適応と使用法,作用と副作用,禁忌を説明する.
6)抗真菌剤,抗生物質
7)非ステロイド抗炎症剤
8)保湿剤
9)ビタミンD3 外用剤
10)免疫調整外用剤(タクロリムス外用薬)
11)抗潰瘍剤
12)粘膜病変に対して,それぞれの疾患と症状に応じた外用療法を説明する.
13)薬剤の相互作用,他療法との併用禁忌の知識
(d)光線療法,放射線療法
行動目標
1)光線療法の理論と種類についての知識の上に立って,皮膚疾患に対する適応を列挙し,説明する.
2)narrow-band UVB,PUVA についての基本的知識と適応疾患を説明し,治療を実施する.
3)凍結療法(ドライアイス法,液体窒素法)について説明し,適応を選んで実施する.
4)電気療法(電気凝固,電気乾固,イオントフォレーシス)およびレーザーメスとしての炭酸ガスレーザーについて説明し,実施する.
5)皮膚疾患治療に必要な放射線療法の理論と種類を知る.
6)局所注射法および局所処置法について知り,症例に応じて実施する.
7)局所ブロック療法(例えば,星状神経節ブロック)の末梢循環に対する効果を説明し,皮膚疾患に対する適応を理解する.
(e)スキンケア
行動目標
1)スキンケアの意義について,健常人および疾患別に熟知する.
2)スキンケア製品に含まれる成分の皮膚に対する作用を知る.
3)各種スキンケア製品の適応と使用法を理解する.
(f)皮膚外科
行動目標
1)皮膚外科一般について,適応・方法・限界を理解し,症例について適応を説明する.
2)術者・手術野の消毒,清潔野の設定,麻酔法,とくに局所麻酔の実施法,皮膚外科で使用する手術器具の種類と名称を列挙して説明する.
3)皮膚外科的切除法,縫合法を熟知し,実施する.
4)皮膚および口腔粘膜の開放性および非開放性損傷の治療を指導医の指導のもとで実施する.
5)Z 形成術,W 形成術,各種フラップ法について理解し,症例に当たって適確な作図を実施する.
6)極薄分層植皮(Thiersch 法)・分層・全層・メッシュ法などについて,それぞれの方法,デルマトームの使用法,適応を説明し,実施する.
7)皮膚剥削術,化学外科療法(Mohs 法)についての適応を説明し,症例に対して実施する.
8)リンパ節郭清法の適応を理解し,指導医の指導のもとに実施する.
9)外傷,炎症病巣の治癒機転,術後の生理機能および外観の維持,変形の改善について熟知する.
10)術後の管理(術後感染の防止,ケロイド形成予防など),経過観察,後療法についての必要な事項を理解し,実施する.
(g)レーザー療法
行動目標:CO2 レーザー,色素レーザー,Q-スイッチルビー,アレキサンドライトレーザー,半導体レーザー療法について実際の適応疾患および保険適応疾患を含め必要な事項を説明し,実施する.
コースIII 皮膚科学・各論
一般目標:コースI,II の研修を基礎として,各種の皮膚疾患全般について必要な知識・技術・態度を修得し,実際の診療に当たって個々の症例に応じた適切な診断・治療・指導を独力で行い,専門医としての実力が発揮できるようになることを目標とする.
研修項目
(1)皮膚炎・湿疹
(2)紅皮症
(3)蕁麻疹
(4)痒疹
(5)瘙痒症
(6)薬疹
(7)血管・リンパ管の疾患
(8)紅斑症
(9)角化症
(10)炎症性角化症と膿疱症
(11)水疱症
(12)膠原病および類症
(13)代謝異常症
(14)軟部組織(皮下脂肪組織・筋肉)疾患
(15)肉芽腫症
(16)太陽光線による皮膚障害
(17)放射線皮膚障害
(18)熱傷
(19)皮膚潰瘍
(20)褥瘡
(21)色素異常症
(22)母斑と母斑症
(23)皮膚形成異常
(24)遺伝性結合織病
(25)上皮性腫瘍・神経系腫瘍
(26)間葉系腫瘍
(27)リンパ腫と類症
(28)メラノサイト系腫瘍
(29)ウイルス感染症
(30)細菌感染症
(31)真菌感染症
(32)抗酸菌感染症
(33)性感染症(STD)
(34)動物性皮膚症・寄生虫
(35)附属器疾患(汗器官・脂腺・毛髪・爪)
(36)粘膜疾患
(37)全身疾患と皮膚
(1)皮膚炎・湿疹
行動目標
1)皮膚炎・湿疹の定義・分類・一般的症状を説明する.
2)皮膚炎・湿疹の一般的問診法を熟知して実施する.
3)皮膚炎・湿疹の一般的局所療法・全身療法の原則を実際に適用し,熟練する.
4)接触皮膚炎の成立機序・病理変化・免疫過程・原因について説明する.
5)接触皮膚炎の症状・経過を熟知し,症例に応じて適切な指示と治療を実施する.
6)手湿疹の症状・経過を熟知し,日常生活指導・治療を実施する.
7)アトピー性皮膚炎の病因論・経過・小児疾患としての重要性・治療法を説明し,症状を熟知する.また,治療ガイドラインの内容について熟知する.
8)脂漏性皮膚炎の症状・経過を説明し,症例に応じた治療を実施する.
9)貨幣状湿疹の症状・経過を説明し,治療を実施する.
10)自家感作性皮膚炎の意味・症状を説明し,治療を実施する.
11)乾燥性湿疹,皮脂欠乏性湿疹の病態を説明し,予防のための日常生活指導を行う.
12)Vidal 苔癬,うっ滞性皮膚炎,進行性指掌角皮症,異汗性湿疹,汗疱,顔面単純性粃糠疹,Riehl黒皮症について理解する.
(2)紅皮症
行動目標
1)定義・分類・病態・一般的症状を説明する.
2)原疾患に対応した適切な指導と治療が実施できる.
(3)蕁麻疹
行動目標
1)蕁麻疹の定義・分類・症状(特に症状の多様性)を熟知する.
2)蕁麻疹の問診法・診断法・検査法(原因検索法)を熟練し実施する.
3)蕁麻疹の発症機序,原因,病態・病理などについて熟知する.特に,発症機序・原因の多様性,病態形成に関与する化学伝達物質などについて熟知する.
4)急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹の相違を説明する.
5)機械性(人工)蕁麻疹,寒冷蕁麻疹,コリン性蕁麻疹,日光蕁麻疹などの発症機序を説明し,診断・治療を実施する.
6)血管性浮腫の発症機序を説明し,診断・治療を実施する.
7)蕁麻疹の合併症・続発性について説明する.
8)蕁麻疹の治療法を熟知し,実施する.
9)蕁麻疹の生活指導について熟知し,実施する.
10)痒疹の定義・分類・病態・症状を説明する.
(4)痒疹
行動目標
1)痒疹の発症と全身性病変との関連を説明する.
2)痒疹の治療法を説明し実施する.
(5)瘙痒症
行動目標
1)瘙痒症の定義・分類・症状を説明する.
2)瘙痒症と基礎疾患との関連を説明する.
3)瘙痒症の治療,生活指導を説明し実施する.
(6)薬疹
行動目標
1)薬疹の定義・種類・一般症状を説明する.
2)薬疹の一般問診法・診断法を熟知して実施する.
3)薬疹の発症機序・病理変化・免疫経過について説明する.
4)薬疹の一般的治療法を実際に適用し,熟練する.
5)薬疹の症状・経過を熟知し,経験した症例に応じて適切な指示を行い,治療を実施する.
6)薬剤性Stevens-Johnson 症候群,薬剤性中毒性表皮壊死症,薬剤性剥脱性皮膚炎,薬剤誘発過敏症症候群(DIHS)の症状と経過を説明し,治療する.
7)固定薬疹,薬剤性扁平苔癬,薬剤性痤瘡の症状を理解し,治療する.
8)新たに開発される薬剤についての薬疹情報を入手することを心掛ける.
(7)血管・リンパ管の疾患
行動目標
1)血管炎の定義・種類・一般的症状を説明する.
2)血管炎の成立機序・病理変化・免疫過程・原因について説明する.
以下,3)〜10)について症状・経過を熟知し,治療を実施する.
3)皮膚アレルギー性血管炎
4)皮膚結節性動脈周囲炎
5)蕁麻疹様血管炎
6)アナフィラクトイド紫斑
7)膠原病に伴う血管炎,Wegener 肉芽腫症,アレルギー性肉芽腫症,持久性隆起性紅斑,悪性萎縮性丘疹症,Mondor 病,皮斑様血管炎,側頭動脈炎・閉塞性動脈硬化症,Buerger 病,動静脈瘻,移動性血栓性静脈炎,うっ血性症候群,肢端紅痛症
8)網状皮斑
9)特発性色素性紫斑
10)クリオグロブリン血症性紫斑,高グロブリン血症性紫斑,DIC,血小板減少性紫斑
11)紫斑を生じる疾患の種類・一般的症状・経過を熟知する.
12)リンパ浮腫について理解する.
(8)紅斑症
行動目標
1)紅斑症の多彩な症状・分類・概念について熟知するとともに,全身疾患との関係を説明する.
2)多形滲出性紅斑の原因の多様性,軽症型(Hebra型,EEM minor),重症型(EEM major)の臨床・病理を理解し,検査・治療を実施する.最重症型粘膜皮膚眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)の原因,特徴,治療につき説明する.
3)結節性紅斑の原因の多様性,臨床・病理組織所見を理解する.本症を生じやすい基礎疾患を熟知する.臨床的に本症と類似するBazin 硬結性紅斑,血栓性静脈炎,結節性多発動脈炎,脂肪類壊死症,サルコイドーシスとの臨床的・組織学的鑑別を説明する.
4)Behcet 病の概念・皮膚症状と全身症状・診断基準・治療を理解し説明する.
5)Sweet 病の概念・全身症状・皮疹と組織像・治療・合併しやすい基礎疾患につき理解し説明する.
以下,6)〜8)の概念・原因・症状・治療につき理解する.
6)Reiter 病
7)Darier 氏遠心性環状紅斑
8)持久性隆起性紅斑
9)次の紅斑類の概念と全身性疾患との関連を理解し説明する.
慢性遊走性紅斑とライム病,壊死性遊走性紅斑とグルカゴノーマ症候群,匍行性迂回状紅斑と内臓悪性疾患,リウマチ性環状紅斑とリウマチ熱.
(9)角化症
行動目標
1)表皮分化(角化)過程の基本的概念を理解する.
2)角化過程で発現する種々の分子についての基本的性質を熟知する.
3)角化異常症の成立機序におけるケラチンを含めた関連分子の役割を熟知する.
以下,4)〜10)について臨床・病理変化・治療を理解する.また,遺伝子異常の解明されたものについては,その内容も理解する.
4)魚鱗癬および魚鱗癬症候群に属する症候群
5)掌蹠角化症
6)Darier 病および家族性良性慢性天疱瘡(Hailey-Hailey 病)
7)黒色表皮腫
8)汗孔角化症
9)毛孔性紅色粃糠疹,進行性紅斑角化症,変動性紅斑角化症
10)毛孔性苔癬,顔面毛包性紅斑黒皮症,連圏状粃糠疹,鱗状毛包性角化症,持続性扁豆様角化症,疣贅状肢端角化症,stucco keratosis,融合性細網状乳頭腫
(10)炎症性角化症と膿疱症
行動目標
1)炎症性角化症・膿疱症の定義・種類・臨床の一般的事項を説明する.
2)乾癬の疫学・病態生理・病態変化を説明する.
3)乾癬の症状・経過を熟知し,症例に応じて適切な指示と治療を実施する.
4)PUVA 療法,UVB 療法(narrow band UVB 療法など),ビタミンD3 外用,レチノイド,シクロスポリン療法などの適応,作用と副作用,併用禁忌を説明し,実施する.
5)膿疱性乾癬の臨床・経過・治療を説明する.
6)疱疹状膿痂疹および稽留性肢端皮膚炎,角層下膿疱症,好酸球性膿疱性毛包炎の定義・臨床を理解する.
7)掌蹠膿疱症の臨床・経過・治療を熟知する.
8)類乾癬の種類・臨床・病理変化・経過・治療を理解する.菌状息肉症との関連を理解する.
9)扁平苔癬の臨床・病態生理,治療を説明する.薬剤アレルギーとの関連を理解する.
10)Gibert 薔薇色粃糠疹の臨床・経過を熟知し,鑑別診断を説明する.
11)光沢苔癬,線状苔癬,毛孔性紅色粃糠疹,Mucha-Habermann 病の臨床を理解する.
(11)水疱症
行動目標
1)水疱症の分類・概念について熟知する.
2)天疱瘡および類天疱瘡の分類,臨床,病理変化,免疫所見を熟知する.また,最近明らかになった抗原物質の性状・表皮の接着機構における役割を知り,水疱形成における関与を考察する.
3)血漿交換療法,テトラサイクリン・ニコチン酸アミド併用療法などの新しい治療法の適応,作用と副作用を熟知する.
4)蛍光抗体直接法および間接法,split skin による間接法,ELISA による抗デスモグレイン抗体検査の意義を理解し,治療を実施する.
5)妊娠性疱疹,瘢痕性類天疱瘡,後天性表皮水疱症,疱疹状皮膚炎,線状IgA 皮膚症などの比較的稀な自己免疫性水疱症の分類,臨床,病理変化,免疫所見を熟知する.
6)先天性表皮水疱症の分類,臨床,病理変化,その原因遺伝子の異常を熟知し,遺伝相談・治療を理解する.
(12)膠原病および類症
行動目標
1)全身性エリテマトーデスの症状・診断基準を熟知し,患者の問診・診察・検査の実施と判定に熟練する.
2)各種自己抗体の臨床的意義を理解する.
3)全身性エリテマトーデスの重症度の判定を説明し,それぞれに応じた治療を実施する.しかも,長い年月をかけて患者の生活を指導し,要望に応える.
4)全身性エリテマトーデスと妊娠についての最近の考え方を説明する.さらに,患者の要望に応えて治療を実施する.
5)円板状エリテマトーデス,深在性エリテマトーデス,凍瘡状エリテマトーデスの臨床,診断・治療を熟知し,実施する.
6)新生児エリテマトーデス,亜急性エリテマトーデスの臨床,診断・治療を熟知し,実施する.
7)抗リン脂質抗体症候群の概念を理解し,臨床・診断・治療を熟知する.
8)全身性強皮症の皮膚症状,全身症状・診断基準を熟知し,患者の問診・診察・検査・治療を実施する.
9)限局性強皮症の病型・臨床・臨床所見・経過・治療を説明し,実施する.
10)皮膚筋炎の皮膚症状・全身症状・診断基準を熟知し,必要な検査・治療を説明し,実施する.
11)Sjogren 症候群の臨床・診断基準を熟知し,必要な検査・治療を説明する.
12)オーバーラップ症候群,混合性結合組織病(MCTD)の臨床,診断・治療を熟知し,実施する.
13)リウマチ熱,リウマチ様関節炎,悪性関節リウマチの臨床・他の膠原病との鑑別点を説明する.
14)成人Still 病の概念,臨床・治療について実施する.
15)壊疽性膿皮症の臨床症状を理解し,治療する.
(13)代謝異常症
行動目標
1)アミロイドーシスの分類,皮膚および全身症状を理解する.
2)アミロイド苔癬,斑状アミロイドーシスの臨床および病理組織像を説明し,その他の皮膚アミロイドーシスについて理解する.
3)全身性アミロイドーシスの組織診断について理解する.
4)ムチンが皮膚に沈着する疾患を理解し,その染色法と染色態度を知り,汎発性粘液水腫,粘液水腫性苔癬,毛包性ムチン沈着症について皮疹およびその組織像,全身疾患との関係について説明する.
5)先天性ヒアリン沈着症(皮膚粘膜ヒアリノーシスおよび全身性ヒアリノーシス),膠様稗粒腫,青年性浮腫性硬化症,ムコ多糖症の臨床について理解する.
6)先天性結合織線維代謝異常症について理解する.
7)黄色腫の臨床像と高リポ蛋白症との関連を理解し,適切な治療を行う.
8)ポルフィリン代謝異常の概要を知り,各種ポルフィリン症の症状,特に遅発性皮膚ポルフィリン症の臨床を理解する.
9)マクログロブリン血症,クリオグロブリン血症,ヘモクロマトーシス,フェニルケトン尿症,ホモチステイン尿症,先天性白皮症について病因と臨床を理解する.
10)痛風の概念と全身および皮膚症状について理解する.
11)ビタミン欠乏症の種類を知り,ペラグラの病理,臨床症状などを知る.
12)石灰沈着をきたす疾患について理解する.
13)亜鉛欠乏症候群,腸性肢端皮膚炎について概念・臨床・治療などを説明する.
(14)軟部組織(皮下脂肪組織・筋肉)疾患
行動目標
1)皮下脂肪組織を病変の場とする疾患の分類・臨床を理解する.
2)皮下脂肪組織を侵す疾患:Weber-Christian 症候群,histiocytic cytophagic panniculitis,深在性エリテマトーデス,物理的な原因による脂肪織炎,木村氏病,皮下脂肪壊死症,新生児硬化症,全身性または局所性脂肪萎縮症,小児腹壁遠心性脂肪萎縮症などについて臨床所見・検査所見・病理組織像・診断および治療を理解する.
3)筋膜および筋肉の病変を主体とする疾患,例えば,結節性筋膜炎,好酸球性筋膜炎(Shulman症候群),増殖性筋炎・筋膜炎,化骨性筋炎・筋膜炎の概念と臨床を理解する.
(15)肉芽腫症
行動目標
1)肉芽腫の基本概念・成立機序・病理所見について説明する.
2)異物肉芽腫の臨床,病因および組織学的所見の特性を説明する.
3)類壊死性肉芽腫(環状肉芽腫,リポイド類壊死症,リウマチ結節,annular elastolytic giant cell granuloma)の概念・臨床・病理・治療を説明する.
4)サルコイドーシスの概念・診断基準・臨床所見・検査異常・病理所見を説明する.
5)顔面播種状粟粒性狼瘡の概念・臨床所見・治療について熟知する.
6)若年性黄色肉芽腫の概念と臨床・病理を説明する.
7)乳児臀部肉芽腫,血管拡張性肉芽腫の概念・臨床・病理・治療法を説明する.
(16)太陽光線による皮膚障害
行動目標
1)光線の種類と皮膚におよぼす作用について熟知する.
2)日光による生理的皮膚反応:日光皮膚炎,光老化,項部菱形皮膚,光線角化症の臨床・病理組織像を説明する.
3)光線過敏症:薬剤性光線過敏症,光接触皮膚炎,多形日光疹,日光蕁麻疹,種痘様水疱症の概念・臨床・検査・治療・予防を説明する.
4)色素性乾皮症の発生機序・臨床・生活指導について説明する.
5)ポルフィリン症の病型・臨床・検査・治療を理解する.
6)可視光線または紫外線によって悪化する皮膚疾患を理解する.
(17)放射線皮膚障害
行動目標:種類・原因・臨床・治療・続発疾患について熟知する.
(18)熱傷
行動目標:全身管理,局所処置,後療法などについて必要な事項を説明し,実施する.
1)熱傷の分類・臨床・経過を熟知する.
2)熱傷の局所療法の基本的事項を熟知し,熟練する.
3)重症熱傷の全身管理・治療について熟知し,実施する.
4)化学熱傷の全身管理および局所治療を実施する.
(19)皮膚潰瘍
行動目標
1)皮膚潰瘍の成因について説明する.
2)成因別の治療法を実施する.
3)下腿潰瘍の病態と治療について全身性疾患との関連で述べる.
(20)褥瘡
行動目標:全身管理,局所処置,後療法などについて必要な事項を説明し,実施する.
1)褥瘡の成因と予防法について説明し,予防法を実施する.
2)褥瘡の病期分類を熟知し,それに基づく治療法を実施する.
(21)色素異常症
行動目標
1)色素異常症の病理学的所見,すなわちメラニンの増加や減少,消失が表皮,真皮のどのような変化と対応をするかを理解する.
2)色素異常症の一般的薬物療法,手術療法,遮蔽(カモフラージュ)法,レーザー療法等について熟知し,実施する.
3)白皮症の分類と原因,診断法について熟知し,患者の生活指導を実施する.
4)尋常性白斑の分類と発生機序,自然経過,治療法について熟知し,実施する.
5)真皮メラノサイトーシスの概念と,これに属する疾患について説明する.
6)色素異常症の遺伝的,家族的背景について熟知し,患者や家族への適切な助言を与え,症例によっては遺伝相談の専門家を紹介する.
7)内分泌疾患等の全身性疾患における色素異常の発生機序,症状と診断法,治療法について熟知し,実施する.
8)メラニン以外の物質,例えば金属,薬剤,その他の色素(カロチン・ヘモジデリンなど)によって生じる色素異常症の症状や発生機序,治療法を説明する.
(22)母斑と母斑症
行動目標
1)母斑の概念を理解し,その病理発生に基づいた分類を説明する.
2)表皮母斑・脂腺母斑とその症候群について症状と経過を,治療方針を説明する.
3)母斑細胞母斑の症状・病理組織像・鑑別すべき疾患を列挙し説明するとともに,特に悪性黒色腫との鑑別点を熟知する.
4)分離母斑,Sutton 母斑,Spitz 母斑,dysplastic nevus syndrome について説明する.
5)母斑細胞母斑の治療方針について熟知し,指導医のもとで治療を実施する.
6)扁平母斑,単純黒子,太田母斑,青色母斑,蒙古斑および類症として遅発性両側性太田母斑様色素斑の病理組織像・治療方針について説明する.
7)母斑性色素性病変の治療におけるレーザー治療の適応について理解する.
8)単純性血管腫,苺状血管腫,海綿状血管腫,くも状血管腫,正中部母斑(サモンパッチ),海綿状リンパ管腫の症状,予後,病理組織像を説明し,それぞれの治療方針を熟知するとともに,患者,家族に対して適切な説明をする.
9 ) inflammatory linear verrucous epidermal nevus,面皰母斑,結合織母斑,軟骨母斑,副耳,耳瘻孔,表在性脂肪腫性母斑,平滑筋母斑,貧血母斑の症状を説明する.
10)母斑症の概念を理解し,頻度の高い母斑,母斑症の全身的合併症,検査法,病理組織像,予後,治療の適応,開始時期を熟知する.
11)結節性硬化症(Pringle 病),神経線維腫症(Recklinghausen病;NF1),神経鞘腫症(NF2),神経皮膚黒色症,Albright 症候群,Peutz-Jeghers症候群,汎発性黒子症,色素失調症(Bloch-Sulzberger 症候群)の症状を説明する.
12)神経線維腫症および結節性硬化症の遺伝子レベルの異常について理解する.
13)von-Hippel-Lindau 母斑症,先天性血管拡張性大理石様皮斑,Sturge-Weber 症候群,Klippel-Weber症候群,blue-rubber-bleb nevus syndrome,血管色素性母斑の症状を説明する.
14)母斑,母斑症,遺伝性皮膚形成異常の遺伝について理解し,患者・家族に説明し,適切な指示を与えたり,疾患によっては遺伝相談の専門家に紹介する.
(23)皮膚形成異常
1)全身性の異常の見られるGoltz 症候群,先天性外胚葉形成不全症,nail-patella 症候群の症状を理解する.
2)先天性に真皮の萎縮を起こす斑状皮膚萎縮症,Pasini-Pierini 皮膚萎縮症,先天性多形皮膚萎縮症,Rothmund-Thomson 症候群,Werner 症候群,顔面半側萎縮症などの症状を理解する.
(24)遺伝性結合織病
行動目標:遺伝性結合織病として弾性線維性仮性黄色腫,Ehlers-Danlos 症候群,皮膚弛緩症,Marfan 症候群,pachydermoperiostosis などの症状を理解する.
(25)上皮性腫瘍・神経性腫瘍
行動目標
1)上皮性皮膚腫瘍を細胞の分化の方向により表皮,毛包,脂腺,アポクリン汗腺およびエクリン汗腺に由来別に分類し理解する.
2)老人性疣贅および嚢腫の臨床像,病理組織像,鑑別診断,治療法を熟知し,治療に熟練する.
3)汗器官起源性腫瘍:汗嚢腫,汗孔腫,らせん腺腫,汗管腫,汗腺腫,皮膚混合腫瘍,円柱腫などの臨床像,病理組織像,病因などにつ
いて理解する.
4)光線角化症,白板症,ケラトアカントーマ,oral florid papillomatosis の症状について説明する.
5)Bowen 病,乳房および乳房外Paget 病について臨床像,病理組織像,鑑別診断,予後を熟知し,治療を指導医とともに実施する.
6)有棘細胞癌の発症要因,発生母地,臨床像,TNM分類,病理組織像,予後,治療法について熟知し,指導医とともに治療を実施する.
7)基底細胞癌の臨床像,病理組織像,鑑別診断,予後,治療法について熟知し,指導医とともに治療を実施する.
以下,8)から12)について説明する.
8)汗腺癌,脂腺癌,毛器官癌,転移性皮膚癌
9)良性神経性腫瘍として神経線維腫,神経鞘腫,顆粒細胞腫の臨床症状と病理組織像
10)Merkel 細胞腫,神経線維肉腫
(26)間葉系腫瘍
行動目標
1)皮膚線維腫の概念および一般的症状を説明する.
2)ケロイドおよび肥厚性瘢痕の一般的症状と治療法について説明する.
3)脂肪腫の臨床および血管脂肪腫との違いについて述べる.
4)皮膚平滑筋腫,グロームス腫瘍について理解する.
5)血管肉腫の病態と治療法を熟知する.
6)筋・腱鞘由来の軟部腫瘍の種類と症状を知る.
(27)リンパ腫と類症
行動目標
1)リンパ腫の分類,診断法,治療の原則を理解する.
2)菌状息肉症の症状について3 期に分けて説明し,その病理および病理組織について理解し,治療について述べる.
3)Sezary 症候群の臨床について理解し,菌状息肉症との鑑別について述べる.
以下,4)〜6)について熟知し,治療する.
4)成人T 細胞白血病
5)CD30+リンパ増殖症
6)EB ウイルス関連リンパ増殖症
7)Hodgkin 病,白血病,隆起性皮膚線維肉腫,Kaposi肉腫,悪性線維性組織球腫について理解する.
8)肥満細胞腫について理解する.
9)Langerhans 細胞性組織球症(Letterer-Siwe 病,Hand-Schuller-Christian 病, 骨好酸球性肉芽腫,self-healing histiocytosis)の概念と臨床・病理を説明する.
10)偽リンパ腫についてリンパ腫との鑑別を熟知する.
(28)メラノサイト系腫瘍
行動目標
1)きわめて転移しやすい悪性黒色腫の生物的特徴を把握し,診断法と治療方針を身に付ける.
2)悪性黒色腫の疫学上の特徴を理解し,病変について考察する.
3)臨床的特徴をClark の病型分類(結節型,表在拡大型,末端黒子型,悪性黒子型)と関連させて把握する.
4)悪性黒色腫の臨床診断上のポイントを理解する.とくに早期病変の臨床的,病理組織学的特徴を理解し,色素細胞母斑との関係,鑑別について学習する.
5)臨床診断の補助的となる検査法(蛍光法やダーモスコピーなど)について理解する.
6)悪性黒色腫の病理組織診断について実際のプレパラートを観察して所見をとり,Spitz 母斑やdysplastic nevus との鑑別について理解する.
7)悪性黒色腫の診断確定に有用な免疫組織学的マーカー(S-100 蛋白,HMB-45 など)やドーパ反応,電顕所見などについて学習し,それらの実技を身に付ける.
8)TNM 分類と病期分類(UICC)を理解し,病期決定のための検査法を知る.特に予後因子として重要なtumor thickness(Breslow)とレベル分類(Clark)について理解する.
9)悪性黒色腫の治療原則を各病期別の治療指針として整理し,理解する.特に早期病変の切除範囲,センチネルリンパ節生検や進行期病変の多剤併用化学療法の実際を身に付ける.
10)悪性青色母斑の臨床的特徴を学習し,悪性黒色腫や青色母斑との関係について理解する.
(29)ウイルス感染症
行動目標
1)ウイルス性皮膚疾患を原因ウイルス群によって分類・列挙し,病態,疫学検査法(血清学的検査法・DNA 診断),病理(光顕的,電子顕微鏡学的),症状を説明する.
2)単純ヘルペス(口唇ヘルペス,性器ヘルペスヘルペス性歯肉口内炎,Kaposi 水痘様発疹症,ヘルペス性瘭疽,新生児ヘルペス)の
病態を理解し,それらの病原の検索,診断,治療を行う.
3)水痘および帯状疱疹などの病態を熟知し,それらの病原の検索,診断,治療を行う.
4)水痘および帯状疱疹の合併症を熟知し,適切な処置を実施する.
5)抗ヘルペスウイルス剤の薬理を理解し,適切な治療を実施する.
6)ヒト乳頭腫ウイルス感染症(ミルメシア,尋常性疣贅,青年性扁平性疣贅,尖圭コンジローム,ボーエン病様丘疹症,疣贅状表皮発育異常症,足底嚢腫)の病態を理解し,診断,治療を行う.
7)伝染性軟属腫の病態を理解し,診断,治療を行う.
8)ウイルス性急性発疹症(風疹,麻疹,伝染性紅斑,手足口病突発性発疹,伝染性単核症,エンテロウイルス発疹症, Gianoti-Crosti 症候群)の疫学,病態を理解し,診断,治療できる.
9)ウイルス性皮膚疾患に罹患した妊婦,胎児の病態を熟知し,適切な処置ができる.
10)免疫不全をきたす全身疾患の合併症としてのウイルス感染症に適切に対応できる.
11)後天性免疫不全症候群エイズ)の原因,病態,症状,経過について熟知する.また皮膚症状を理解する.HIV 感染およびAIDS 患者への対応を理解する.
(30)細菌感染症
行動目標
1)細菌性皮膚疾患を原因細菌別に分類・列挙し,発症機序を説明する.
2)膿皮症の原因菌・病型分類・症状を説明する.
3)膿皮症の検査(グラム染色・細菌培養など)を熟知し,適切な局所療法・全身療法を実施する.
以下,4)〜10)について症状・経過を熟知し,症例に応じて適切な検査と治療を実施する.
4)毛包性膿皮症(毛嚢炎,癤,癤腫症,癰,尋常性毛瘡)
5)汗腺性膿皮症(乳児多発性汗腺膿瘍・化膿性汗腺炎)
6)伝染性膿痂疹ブドウ球菌性およびレンサ球菌性),ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS),toxic shock syndrome , toxic shock-like syndrome
7)丹毒,蜂窩織炎,壊死性筋膜炎,ガス壊疽
8)慢性膿皮症
9)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA感染症
10)A 群B 溶血性レンサ球菌感染症
11)表皮剥脱性毒素などの毒素に熟知する.
(31)真菌感染症
行動目標
1)真菌症の検査法について熟知する.
2)皮膚糸状菌症の症状を熟知する.
以下,3)〜9)について症状,診断法,治療を熟知し,実施する.
3)皮膚糸状菌
4)爪白癬,手足白癬
5)皮膚カンジダ症:また,皮膚カンジダ症の発症要因を理解し,予防法について説明する.
6)癜風,ピチロスポルム毛包炎および一連の癜風菌
関連疾患
7)手掌黒癬,非白癬性爪真菌症
8)スポロトリクス症,黒色真菌症,クリプトコックス症,アスペルギルス症
9)砂毛,北米ブラストミセス症,南米ブラストミセス症,コクシディオイデス症,ムーコル症
(32)抗酸菌感染症
行動目標
1)真性皮膚結核結核疹の概念を説明する.真性皮膚結核の場合は結核菌培養方法を熟練し,PCR法による結核菌DNA の検出法を理解する.皮膚結核の病理組織所見を説明する.ツベルクリン反応の意味を説明する.結核の治療に熟知する.
2)尋常性狼瘡,皮膚疣状結核,皮膚腺病の症状を説明する.
3)壊疽性丘疹状結核疹,陰茎結核疹,Bazin 硬結性紅斑,腺病性苔癬の病型,臨床を説明する.
4)非結核性抗酸菌症:魚槽やスイミングプールでの感染による発生について理解し,症状・治療について説明する.培養方法,PCR 法による診断について理解する.
5)Hansen 病の現状・病因・病型・症状・診断・治療について説明する.適切な社会的対応を実施する.
(33)性感染症(STD)
行動目標
1)最近のSTD の動向を理解し,疾患・臨床・検査・診断・治療を説明し,疾患の相互関係を理解して,感染防止を実施する.
2)梅毒の臨床・検査・診断・治療を熟知する.梅毒血清反応を説明できる.
3)軟性下疳・鼠径リンパ肉芽腫症の病像を知り,治療法を理解する.
4)毛虱・疥癬・陰部疱疹・陰部カンジダ症・尖圭コンジローマの臨床・検査・診断・治療を熟知する.
5)淋疾・クラミジア・トリコモナス・腟カンジダ症について臨床を理解し,対応を説明する.
(34)動物性皮膚症・寄生虫
行動目標
1)動物性皮膚症・皮膚に障害を与える寄生虫症を理解し,その主なものを列挙し,その症状を説明する.
2)刺咬性昆虫(ハチなど),吸血性昆虫(シラミ類,カなど),吸血性ダニ(イエダニなど),刺咬性ダニ(ツメダニなど)の種類と生態,これらによる症状,個体による反応の差を理解し,適切な治療,防除について熟知する.
3)接触により障害を与える害虫(ドクガ類,イラガ類,アオバアリガタハネカクシ,アオカミキリモドキなど)による症状を理解し,適切な治療を行う.
4)疥癬ノルウェー疥癬,動物疥癬について発生,感染様式を理解し,治療,予防につき熟知のうえ,ヒゼンダニの検出方法を指導医のもとに熟練する.
5)マダニ刺咬症を理解し,ライム病伝播との関連につき説明する.
以下,6)〜8)について病因・症状・診断・治療・
予防を熟知する.
6)恙虫病
7)皮膚顎口虫,施尾線虫症,クリーピング・ディジーズ,Manson 孤虫症,フィラリア症,リーシュマニア症の症状
8)水田皮膚炎,海水浴皮膚炎,クラゲ皮膚炎,サンゴ皮膚炎
(35)附属器疾患(汗器官・脂腺・毛器官・爪)
行動目標
1)異汗症(汗疱)の症状と鑑別診断について熟知し,実際に治療する.
2)臭汗症の症状,治療法について熟知し,腋臭症の手術を実施する.
3)汗疹の症状について熟知し,治療を実際に適用し,生活指導をする.
4)汗腺膿瘍の症状を説明し,治療を実施する.
5)多汗症,無汗,Fox-Fordyce 病の症状・経過を説明し,症例に応じた治療を実施する.
6)尋常性痤瘡の発症機序について説明する.
7)尋常性痤瘡・集簇性痤瘡の症状と治療法について熟知して,実際に適用し,熟練する.
8)痤瘡様発疹(薬剤性痤瘡・化粧品痤瘡・職業性痤瘡など)について説明する.
9)皮膚毛包虫症について説明する.
10)新生児痤瘡について説明する.
11)脂腺増殖症について説明する.
12)脂漏について説明する.
13)口囲皮膚炎の原因・症状を熟知し,その治療を実施する.
14)毛周期について説明し,毛の成長に及ぼす種々の影響因子について熟知する.
15)円形脱毛症について説明し,その治療を実施する.
16)男性型脱毛症について説明し,その治療を実施する.
17)抜毛症について説明し,その治療を実施する.
以下,18)〜25)について説明する.
18)休止期脱毛症,外傷性脱毛症,毛髪奇形
19)コールド・パーマ,ヘアダイ
20)多毛症,無毛症
21)爪の色調の変化を生じる原因
22)全身疾患に伴って生じる爪病変
23)爪甲剥離症,匙状爪甲,時計皿爪
24)先天性疾患に伴う爪病変
25)咬爪症
26)爪囲炎の症状を熟知し,その治療を実施する.
27)陥入爪,爪甲鉤彎症について説明し,その治療を実施する.
(36)粘膜疾患
行動目標
1)皮膚科専門医が対応する肉眼で診察可能な口腔粘膜と外陰部の重要な粘膜疾患について正確な知識を持ち,的確に診断し,適切に対処できる.
2)口唇炎の病態を説明し,治療を実施する.
3)口腔・舌・歯肉・歯を侵す皮膚疾患(例えば,膠原病,天疱瘡,扁平苔癬,Behcet 病,Sjogren症候群など)について説明する.
4)皮膚とともに口腔内に生じる腫瘍(例えば,尋常性疣贅,血管腫,粘液嚢腫,oral florid papillomatosis,有棘細胞癌,悪性黒色腫など)の診断と治療を説明し,実施する.
5)外陰部に生じ粘膜も侵す疾患(たとえば,Bowen病,Paget 病など)の診断と治療を説明し実施する.
(37)全身疾患と皮膚
一般目標:内臓病変の皮膚表現であるデルマドロームの意義を理解し,内臓器との関連から発症機序を知る.
行動目標:以下,1)〜5)を熟知する.
1)内臓悪性腫瘍に伴うデルマドローム.例:皮膚転移,皮膚筋炎,腫瘍随伴性天疱瘡,黒色表皮腫,Sweet 病,紅斑類,紅皮症,Leser-Trelat 徴候,Bowen 病.
2)糖尿病に合併する皮膚疾患.例:黄色腫,壊疽,リポイド類壊死症,環状肉芽腫,前脛骨部萎縮性色素斑,水疱,湿疹,掻痒症,感染症,フットケアの具体的な方法.
3)皮膚と視覚器を同時に侵す疾患.例:アトピー性皮膚炎,ヘルペス,Behcet 病,Chediak―東症候群,Vogt―小柳―原田症候群,Reiter 症候群,弾力線維性仮性黄色腫,サルコイドーシス,Crow-Fukase 症候群.
4)肝臓障害,消化管障害,腎臓障害などさまざまな臓器障害に合併する皮膚疾患.
5)全身性遺伝性疾患に伴う皮膚症状.
おわりに
以上,皮膚科専門医として修得,履修すべき内容を具体的に記述した.しかし,医学は日進月歩であるため,内容は適宜更新される.「研修内容」は,性格上,学習するものを主語として記されているが,指導医も熟読して,その施設において実施可能な指導内容の設定とカリキュラムの作成に役立てて頂きたい.